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鍼灸師の雇用に対する考え方(1)―採用前に自らに問いかけた5つのこと

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新しいスタッフと出会い、共に成長していく喜びを感じたいと思っています。

 

技術者として、経営者として、そして、これからは教育者として自分を磨いていかなければなりません。求人で人が集まるかどうかは、私次第だと思っています。実は、仕事の中でもっとも緊張し、重みを感じるのが求人です。

 

求人の準備は、自分探しとほぼ同義です。「どんな人材を求めているのか」と思いを巡らせることは、自分への問いかけだからです。自身に問いかけるものを整理してみたら、次の5つでした。

 

1.自分がしたいこと
2.責任を負う覚悟があるのか
3.信頼を得るにはどうすればいいか
4.自分の魅力とは何か
5.孤独に耐えられるのか

 

1.自分がしたいこと

「何をしたいのか?」に即答できなかったら、求人はうまくいくはずがありません。自分のしたいことを正確に伝え、そこに価値を見出してくれる人との出会いを求めるのが求人。同じ目標に向かって歩めることが条件です。

 

私の目標は、一人では登れない山を一緒に登る仲間を集めることです。それぞれが思い思いのことをすることも大事かもしれませんが、力を合わせることも大事です。今、鍼灸業界は成功者と言われる人はほぼ個人事業主という異常な状況です。

 

「開業しなければ一人前ではない」という空気まで漂っています。なぜそんなことを言う鍼灸師がいるのか理解できません。一人一人が個人事業というのは、情報や施設などのインフラが共有できないのでコストが膨らみます。鍼灸業は、仕入れが少ない職種なので、コスト意識が低いのかもしれません。しかし、鍼灸師各々が開業資金を用意して、患者さん集めに奔走する(ためのコストを使う)のは、業界全体としては、資金と労力の垂れ流しです。

 

業界を一つにしようなんて思っていませんが、鍼灸師がバラバラに努力しても、大きな力を生み出すのは難しいでしょう。だから、率先して組織にしかできないことに挑戦しようと思います。主催しているセミナーも目的は同じです。仲間作りと情報共有という大きなテーマを掲げてやっています。

 

チームづくりは私の目的であり目標ですが、それを成し遂げるには所属する一人一人に“利”がなければなりません。みんなが「ここにいるから自分の力を出せる」と思えることだと思います。言葉にするのは簡単ですが、これを実現するのは、とても難しいことだと思っています。

 

社内ではチームワークの重要性を常に訴えています。私は「チームワークバカ」です。

仲間がいれば、知恵を出し合えるばかりでなく、練習や技術研究もしやすくなります。休みたい時に休めることも大事なことです。チームによって得られる自由は計り知れません。セミナーを主催しているので、開業した鍼灸師が集まり、仲間の重要性を再認識する光景を目の当たりにしています。

 

2.責任を負う覚悟はあるのか

スタッフ一人一人に確かな収入を約束しなければなりません。求人に応じてやってくることは、他の収入を捨てることです。いったん捨てたら元に戻せません。求人は、後戻りできないところに誘い込む行為です。ですから、自分の野望や都合だけで行うわけにはいきません。

 

スタッフにはそれぞれの人生があり、その一部を預けてくれているわけです。家族もいます。だから、とても重く感じています。その重さに耐えられる気持ちがなければ、つぶされます。でも、気持ちだけでは無理です。思いやりや責任感だけで耐えられるものではありません。責任を負える能力が備わっていることが必要です。それを、自身に問いかけ、再確認しています。

 

3.信頼を得るにはどうすればいいか

嘘ばかりついていたら、誰も一緒に働いてくれません。だから、約束は守らなければなりません。人として守るべきコト、経営者としての約束ゴトがあります。

 

経営者としては、売上は一定に保つ約束が大事です。多すぎればスタッフに負担がかかり、少なすぎるとスタッフの収入を確保できません。流動的な社会の中で仕事をしているので、売上を一定に保つことは、簡単ではありません。

 

一人でやっている時は「良いときも悪いときもあるさ」と、自分の生活と気持ち次第でどうにかなりますが、組織には通じません。最低賃金からは逃れることはできないからです。「悪い時に備えておく」のも約束を守るための心得です。

 

結局のところ、お金の約束がいちばん大事だと思うのです。ここを守れなかったら一瞬で信頼関係は崩れます。いっぱい給料あげたら喜ぶだろうな、と気前よくやりすぎても崩壊します。

 

油断が許される要素は何一つありません。真面目に技術を磨き、誠実に患者さんに向き合いつづけていくつもりです。スタッフ一人一人の健康状態も大事です。そして、私の健康も。

 

4.自分の魅力とは何か

苦手意識が強い部分です。面白い話ができるわけでもなく、キャーキャー言われるルックスでもないので、特別なものが何もありません。でも、恋愛するわけではないので、割り切るしかありません。

 

自分の魅力が伝わる何かが必要です。「書く」のもその一つかもしれませんが、社員という立場から見れば、あまり重要ではないと思います。入社前に「この人の文章は魅力ある」と思っても、いったん入ってしまえば、その重要度はガクンと下がります。

 

社員から経営者に求めるのは、鍼灸の技術力でも、素敵なルックスでもなく、魅力ある職場をつくってくれる人だと思うのです。働きやすい環境、仕事量に見合った給料、スキルに応じた昇給ではないかと思います。

 

まとめれば、「労働意欲が高まる仕組みをつくるのが上手であること」になるように思います。鍼灸師の腕も魅力になると思いますが、付加価値でしかないと思っています。私の技術力のみに魅力を感じる方は、セミナーに参加して頂く方がよいです。

 

5.孤独に耐えられるか

自営というのは、孤独な仕事です。セミナーに集まる鍼灸師は自営業者が多く、話をしていると、孤独を感じている人は少なくありません。懇親会が悩み相談になる場合があります。

 

自営業者特有の孤独感の正体は何でしょうか。判断や決断をする場面では孤独になります。誰かが責任を取ってくれるわけではないからです。

 

組織になれば、さらに孤独です。組織でも決め事には必ず反対する者が現れます。それぞれに「正義=自分の都合」があるからです。しかし、決めることを決めなければ動けません。

 

会社経営というのは、自分の孤独をしまい込み(もしくはその組織の外で解消)、社員を孤独にさせないように、工夫していくものだと思っています。将来に不安を抱いたり、理解してもらえないストレスが溜まってしまっては良い仕事ができません。

 

経営者は理解を求めて動き続ける生き物です。内に対しても外に対しても。外では顧客に対して(私の職業であれば患者さんや同業者さん)に。内では社員に。変わり続けなければ生き残れません。新しいことに挑戦しなければ取り残されてしまいます。それは、すべて理解を求める行動です。永遠に孤独から逃れられないのです。

 

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